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画材:鉛筆、アクリルガッシュ、墨、膠その他
サイズ:SM(サムホール)
自分の手元に楽しみあるたべものが一片の砂糖しかない。
だれもがわずかばかりの食べ物しか手にはいらない。
そんなとき、M氏が思いついたのは、
くじ引きのように「当たった!」とだれかに喜んでもらう
ような砂糖の使い方だった。
抑留中、実にさまざまな作業をしたM氏。このときは食事全般を担当していた。
なぜ貴重な自分の砂糖を使ったのか?ときくと、
「だって、ちょっとしかないから全部自分で食べてしまったら
すぐに終わってしまってつまんないから」
という答えだった。
「わずかな砂糖でものすごく盛り上がって、みんな元気になったんだ。
その場の空気さえ変わってきた。あれはおもしろかったねぇ」
M氏にとっても意外なほどの反響だったらしく、思い出して語るとき、
なんだか懐かしそうなトーンになる。
以下、自叙伝から。
『作業隊の起床前に起き出して、
熱いチャイ(煮出したインド茶)を天秤棒で担ぎ、
営庭の四カ所に設けられたボーチカ(給油用の樽)を
一杯にして歩くことから一日が始まるのである。
(略)
その間に、山裾までの水汲みは無論のこと、
食堂作業や昼食運搬という大役を要領よく片つけなければならないのだから
時間に追われ通しの毎日だった。
翌日の湯茶が間に合いそうもないときには、
炊事係の小川さんと二人で釜炊きをしながら夜をあかしたこともあった。
おかげで、夜警に巡回してくる警戒兵のトドノフや警備隊長ストロイ爺さんとも
顔なじみになってしまった。
・ ・・・・・・・・・
五月に入って急に日が長くなり始め、暑さも厳しくなって、
湯沸かし場を訪れる人達が俄然多くなってきた。
かねてから、喫茶店風の雰囲気をいくらかでも味わえるようにしてみたいと思っていたので、
思考をこらした数枚の「アイスコーヒー」と書いた紙片を窓ガラスに貼ってみたところ、
意外と人気が集まったが、一旦人気が出始めると、
さらに次の手を考えたくなるものである。
一日のうちに何百人となくやってくるお客さん達に、二、三人だけでもよいから、
甘味のある紅茶でびっくりさせてやったらどうだろう?と、
・・・・・配給でもらったわずかばかりの砂糖を入れてみたら、
このアイデアがまたもや大当たりだった。
・ ・・・・・・・・・・・・
おかげで、帰りがけに、野山に咲き誇っている草花をつんできてくれるお客さんが
増えてきて憩いの場にふさわしい雰囲気になった。
・ ・・・・・・・・・・・・』
(引用「野バラの実に」)
個展へ向けての真摯な想いが伝わってきます。